【ボランティア白書】サステイナブルな社会の実現に向けた企業と企業人の役割

長澤 恵美子 さん

一般社団法人 日本経済団体連合会

SDGs本部統括主幹

■国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の企業への浸透

 ビジネス街を歩いていると、SDGsのバッジを胸につけている企業人に出会うことが増えてきました。SDGsが提示された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、民間企業に期待する役割として、「持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める」と明記しています。また、SDGsの17目標は、企業にとっても重要な「持続可能性(サステナビリティ)」に関わる課題を整理しており、企業がビジネス機会とリスクを知る上でも役立つ、世界共有言語となっています。そのため、SDGsは企業にとっても「自分事」になっており、経営戦略や中長期経営計画などに位置づけて取り組みを進めています。

 

■ボランティア活動を通じて社会的課題への理解を促進

 とは言え、企業が社会的課題の解決に資する活動をするには、事業を担っている社員の社会的感度の向上が必要です。そのため、経団連のアンケート調査で、社員のボランティア活動や寄付の促進を支援しているとしたのは回答企業の97%(178社)となっており、支援理由として、「社員の課題発見力、社会的課 題に対する感度の向上」を挙げる企業は2017年に比べて大幅に増加しています。

 

※経団連「社会貢献活動に関するアンケート調査結果」(2020年9月15日公表)

http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/078.html

 

■危機や困難により変化する企業人のマインド

 日本は残念ながら災害が多発する国ですが、大規模な災害が契機となって、社会のあり方が大きく変わってきました。阪神・淡路大震災は、ボランティア元年と言われていますが、企業にとっては、NPOが提供する多様な価値観に基づく公益的な活動を知る機会となり、企業とNPOのパートナーシップ元年ともいえます。東日本大震災は、多様な組織が課題解決のために連携するマルチ・ステークホルダー元年です。新型コロナウイルスの世界的蔓延により、多くの人が社会課題を「自分事」としてとらえることになりました。日本が、そして世界が持続可能で、だれもが居場所を役割を持つ包摂的な社会に向けて、舵をきる機会にしていく上で、企業による社会貢献活動や企業人によるボランティアを促進することが需要だと思っています。