NECの取り組みと企業ボランティアの意義

毎年開催の「全米ボランティア会議」(Conference on Volunteering and Service)は、“SERVICEUNITES”と“One America” (サービスを結んでアメリカはひとつになる)をキーワードに掲げ、2013年6月19日~22日の間、ワシントンDCで開催、ボランティア活動者、NGO/NPO、企業、政府行政関係者が参加、5千人規模の会議となった。主催はポインツオブライト(Points of Light Institute)。

今年はIAVE日本より鈴木均氏 ((株)国際社会経済研究所 代表取締役社長(兼)NEC CSR・環境推進本部主席主幹)を推薦、フォーラム「社員のボランティア活動‐アジアにおける底力」で、発表していただきました。同フォーラムでは、韓国サムソン社、Bank of America社も発表を行っています。以下は同氏の報告をもとにしています。

 

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NEC(日本電気株式会社)は

明治32年(1899年) 、日本での外資(AT&T)との合弁企業第1号として創立。爾来104年間、通信機器、コンピュータ等、情報通信産業界を牽引。現在は世界に265の関連会社、社員11万人を擁し、売上高が3兆円を超える企業。

 

NEC社員と社会貢献

 社員は、企業理念とグループビジョン2017、グループ企業行動憲章、グループバリュー(基本的価値基準)、およびグループ行動規範を社会責任(CSR)経営の基盤として共有。CSR経営の基本的考えとして、社業を通じて、①経済的責任、②法律と倫理規範の遵守、③社会的課題解決に貢献

すること、そして顧客、株主、投資家、取引・提

携先、地域、社員などステークホルダー(利害関係者)との間のコミュニケーションを通じて信頼を築くことを明示。

 地域と良好な関係維持、良き企業市民として思いやりある行動を果たし社会に貢献することは、NECのCSRの重要な要件として認識され、また、意味づけている。その社会貢献プログラムの企画方針として、社会的弱者への支援や社会起業家の育成などの分野で事業との関係性を重視し、NEC資源の有効活用、NPOとの連携、グループ企業間の協働と社員参画、企業イメージと社員のチームワークとプライド醸成を掲げ、地域・NEC双方にとって費用効率が高く、目に見える成果を獲得すること目指している。

 

“NEC Make-a-Difference Drive”(以下MDD)

 創業100年にあたる1999年を記念して、NEC社員のボランティア活動プログラムとして導入したのは鈴木氏である。米国駐在時に出合ったMDDからヒントを得てグローバルNECで展開、14年にわたり継続。2012年度には17ヵ国、300事業所/会社から12万5千人近くが活動に参加する事業(運動)へと発展している。

 その顕著な成果として、①企業イメージのアップと地域活動における企業としての指導性発揮、②社員のボランティア精神、プライドやモラル向上、③地域の社会的問題に関わる実践(体験)教育の場、をあげている。普段は自宅と会社との往復や社内の仕事に集中し、地域と接する機会が限られている社員にとっても、会社にとっても、地域で活動することが、新たな発見と価値を創造していることがはっきり分る。情報通信や社会インフラ事業など社会課題の解決に貢献する事業により注力しようとするNECにとって社員が社会と接点を持つことは将来のビジネスチャンスにつながる機会ともなり得るのだ。

 

米国企業にみられる社会貢献の傾向と課題

1)参加層を広げる面的展開の必要性が引き続き期待される一方で、より戦略性の高い質的展開が課題となっている。質的展開で重視される2つの視点は以下の通り。

①社会へのインパクトを高める:社員ボランテ ィア活動など、企業による地域貢献活動が地域社会にどんな「具体的な変化」を起こし得るのか、それを念頭においた活動展開が重要。

②企業自身へ価値の創出(事業活動との関係性)

-社員のボランティア活動は社員のチームワークやリーダーシップ、モラール醸成面での貢献が期待されるので、社会貢献部門と人材育成部門との連携や協働が必要となってくる

-コミュニティ(地域)は重要なステークホルダーであり、会社が社会課題解決に貢献するためにも地域との対話や関わりが重要となる

2) 先進米国企業の特徴として、社会性や環境に対する事業上の戦略強化から、社内での起業家マインド育成や社員を活用した社会起業家支援など、社会貢献活動を積極的に人材育成に活用している点が挙げられる。IBMが取り組む途上国への社員派遣制度(IBM Corporate Service Corp)のような専門技能を発揮する活動(プロボノ)が有効なツール(手段)として注目される。

3) 共通の課題として費用対効果の高い評価基準と仕組み作りが挙げられるが、未だ試行錯誤の状況にある。評価の視点は、活動の社会的影響度と、事業・経営の関係性を明らかにできる評価の仕組み作りにあると考える。

 
<2013年6月全米ボランティア会議(ワシントンDC開催)にて鈴木均氏 ()国際社会経済研究所代表取締役社長(兼)NEC CSR・環境推進本部主席主幹の発表>