【シリーズ】アフリカにおけるボランティア活動1 南アフリカ統計局による同国初のボランティア調査

 

アフリカにおけるボランティア活動はどのようになっているのか、ご存知でしょうか?シリーズでアフリカのボランティア活動の現状をご紹介します。

 

以下のレポートは、「Volunteer Activities Survey 2010」の抜粋分の要訳です。

 


1. はじめに

国際労働機関(ILO)は、ボランティア活動は世界における社会と環境の問題解決重要な再生可能資源であり、その活動の規模は甚大で、いかなる場所においても人々の生活の質の向上に貢献していると強調しています。

しかしボランティア活動が重要でありながらも、その活動の計測には努力が払われていません。このような問題提起から南アフリカ統計局(Statistics South Africa 略称:Stats SA)は初となるボランティア活動調査を2010年の第二四半期に実施しました。

 

この統計は、南アフリカの世帯ごと、15歳以上を対象に行われました。ボランティア活動調査の対象となるのは、団体を通じて行った、あるいは個人として行った、家族を対象としない活動です。その形態は、身体に障がいを持つ近隣住人の買い物の荷物を取ってくることから、コミュニティの治安活動にまで至ります。[1]

 

2. 調査の目的

この報告書の主な目的は、ボランティア活動の規模に関する情報を提供し、既存の労働統計で見えない実際の労働力を測ることです。

この調査の具体的な目的は次のとおりです。

•ボランティア活動に携わっている人々に関する信頼できるデータを収集する

•ボランティア活動に従事する人のプロフィールを提供する

•組織ベースのボランティア活動を特定する

•ボランティア活動の経済的価値を算出する。

 

3. 調査の実施方法

ボランティア活動調査(VAS)は2つの段階で構成されています。第1段階では、2010年第2四半期に実施された調査を通してボランティア活動に携わっていた個人を特定しました。第2段階では、ボランティア活動に携わった個人とのインタビュー、参加した活動の種類、実施された活動が組織ベースであるか直接ボランティアであるかのフォローアップインタビューを通じて情報の収集を行いました。

 

4.結果

このレポートに示された結果は、Q2:2010の四半期労働力調査(QLFS)データ収集期間中に実施された何らかの形のボランティア活動に関わった個人に基づいています。南アフリカの民間人の人口全体を反映するため、サンプルの見積もりに重み付けを適用しました。

 

ボランティア活動に従事していた大部分の人々は1つのボランティア活動に参加していました。3つ以上のボランティア活動に参加した人は、回答者が最も多く時間を過ごした活動に焦点をあてました。基準期間(すなわち、インタビューの4週間前)にこれらの活動に費やされた時間数を収集し、過去12ヶ月間にボランティアした合計時間を反映するように計算しました。この算出方法は、年間価値を反映するために導出されています。

 

4.1  ボランティア活動に関わる個人のプロフィール

調査から、個人として直接ボランティア活動に従事した人の割合は53.9%でした。36.8%の人が団体を通じて行い、9.3%が個人であるいは団体を通じてボランティア活動に参加しました。89%以上が、1つの活動に関わり、8.5%が2つ、1.9%が3つ以上の活動に関わりました。

 

120万人の15歳以上の人口が調査期間中にボランティア活動に関わりました。2920百時間費やし、それを12カ月にして計算すると3億790万時間費やしたことになります。

 

4.2 ボランティアの参加率

ボランティアに積極的に関わっている人はどのような人たちであるのか、年齢・性別、人種、婚姻の有無、教育レベルからみていきます。

 

【注記】

[1]調査を実施した時点で、直属の家族のボランティア活動をボランティア活動と見なしてはならないことが推奨されていました。しかし、家族や家族の構成要素の定義は、国や文化によって異なり、この方法を区別することは困難です。ボランティアワーク測定の国際労働機関(ILO)マニュアルが完成した時点で、直系の家族のために行われた活動はボランティア活動とみなされ、世帯員のためにのみ実施されるものは除外されることとなりました。

この報告書では、調査時点で入手可能だったILOのガイドライン案に基づき、直属家族だけでなく家族も除外した結果が示されている。この調査では、直属の家族は以下のように定義されました:

•親(配偶者の両親を含む)

•祖父母(配偶者の祖父母を含む)

•兄弟(兄弟姉妹)(配偶者の兄弟を含む)

•子供(生物学的および養子縁組)

 

表1:年齢と性別におけるボランティア参加率

調査からボランティア率は45-54歳までの年齢とともに増加し、その後減少傾向であることがわかりました。女性は45〜54歳の年齢層の7,5%をピークに徐々に減少し、55~64歳で6.0%に、65歳以上では3,0%に徐々に低下しました。

 

一方、男性のボランティア率は、55〜64歳の年齢層で4,6%ピーク、65歳以上のグループでは3,9%に低下しました。ボランティアの割合は、65歳以上のグループを除き、すべての年齢層において男性よりも女性の方が一貫して高いことがわかります。

表2. 人種と性別におけるボランティア参加率

白色系の人種が男女平均で5.4%と他の人種よりもボランティア参加率が高いことが記されています。ボランティア参加率は黒色系アフリカ人男性が2.1%ともっとも低く、アジア系人種を除いて一貫して女性のボランティア参加率が高いことを示しています。

表3.配偶者の有無によるボランティア参加率

離婚/別居というケースで男女ともにボランティア参加率が既婚女性のグループ同様に高く、男女ともに未婚のグループはボランティア参加率が低いという結果となりました。

表4.学歴と性によるボランティア参加率

高等教育を受けたグループは、男女の別なくボランティア参加率が、学校教育を全く受けていないグループと比較して高いです。高等教育を受けたグループ以外は、女性のボランティア参加率が高く、女性の中で一番低い学校教育を受けていないグループ2.7%も、男性の中で一番高い中等教育修了者のグループ2.4%より高いことがわかります。

 

統計の要点

・120万人の15歳以上の人口がボランティア活動に参加している*[1]。

・ボランティアの内訳は、64,2%が女性、35,7%が男性。

・43万9千人の個人が団体を通じてのボランティア活動に参加し、64万2千人が個人としてボランティア活動を行った。

・89%のボランティアが一つの活動にのみ参加。

・女性のボランティアが65歳以上のグループを除いて男性よりも多い傾向をしめした。

・ボランティア活動参加者は45から54歳をピークに下降し始める。

・黒色系アフリカ人、インド/アジア系のボランティア参加率は、国の平均よりも低く、白色系白人のボランティア参加率は、国平均よりも3,5%高い。

・既婚者あるいは同棲している個人はボランティア活動に参加する率が独身よりも高い。

・高学歴者のボランティア参加率は、そうではない場合と比較して高い。

 

4.3. ボランティア活動にかかわった時間とボランティアの価値

調査から女性は、全体で2億5600万時間、平均6,4時間/1人のボランティア活動を行い、ボランティア活動の生んだ経済的な価値は44億ランド(日本円で約397億8,803万[2])に達しました。一方、男性は1億2300万時間ボランティア活動、平均時間が5,6時間ボランティア活動を行いました。

職を持っている人でボランティア活動を行った人々は、1億4500万時間ボランティア活動を行い、31億ランド(ボランティア活動の総価値の41.9%に相当する)価値を生み出しました。彼らは行ったボランティア活動に対して(何らかの)報酬を受けました。

団体(ボランティアサービスを組織と組織の両方で提供した団体を含む)を通じてボランティア活動をした55万人のうち、大多数(52万人)がNGOなどでボランティアを行った。彼らは2億1,600万時間を費やしており、その経済的価値は6億6,000万ランドにのぼります。

 

これらの活動を常勤の仕事として換算すると、120万人のボランティアは、12ヶ月間に約3億7929万1千時間の活動を行いました。週40時間の勤務と仮定すると、これは常勤の18万2千351人に相当になります。組織を介してボランティアした人は約43万9千人、12ヶ月で換算すると約2億65万5千時間。この時間は週40時間働いている9万6千469人に相当します。

 

 

【注記】

[1] 2010年の南アフリカの人口は5098万人

[2] 1ランド(ZAR)は約9円