アメリカのボランティア活動の全体像-統計調査から

アメリカ合衆国労働省労働統計局(以下統計局)は、労働市場の活動水準、労働条件、価格変動を調査集計し公表しています。同統計局から2016年2月25日に、2015年のアメリカ国内のボランティア動向の調査結果がリリースされました。2015年度のデータですが、ボランティア先進国と言われるアメリカのボランティア活動の動向が見えるデータです。

 

(本項は https://www.bls.gov/news.release/pdf/volun.pdf を翻訳しました)


 

調査について

 

調査によると、ボランティア参加率は0.4%減少し、24.9パーセント。これは、約6,260万人が2014年9月から2015年9月までの間、最低一度は団体であるいは団体を通じてボランティア活動に従事したことを意味しています。

 

これらのボランティアに関するデータは、国家及びコミュニティ・サービスのための協会(the Corporation for National and Community Service)がこの集計のスポンサーとなり、2015年9月の人口調査の補足として集計されました。人口調査は、雇用統計のベースとなる総人口から15歳以下、軍人、施設収容されている人などを差し引いた、雇用と失業に関する約60,000世帯を対象とした毎月行われている調査です。

 

統計学上のボランティア活動内訳

 

ボランティア活動参加を性別で見ると、男性の参加率は21.8%で2015年9月末からほとんど変化がありませんでした。女性は、昨年は28.3%であったのに対し、27.8%と減少しましたが全ての年齢層、教育レベル、そのほかの統計学的特性を見ても、女性は男性と比較してボランティアに関わっている傾向が見られました。

 

年齢別では、35歳~44歳、45歳~54歳のグループが最もボランティア活動に関わっており(前者28.9%、後者28%)、20歳~24歳のグループがボランティアに関わる率が最も低い(18.4%)ことが分かりました。10代(16歳~19歳)のグループがボランティア活動に関わる率は26.4%と高く、年間を通じて35歳~44歳、55歳~64歳のグループの参加率が減少しました。

 

人種別では、白人は26.4%、黒人は19.3%、アジア系は17.9%。ヒスパニック系は15.5%で、これらの結果はわずかな変化、あるいは全く変化していません。

 

既婚者のボランティア率は29.9%と未婚者の19.9%に比べて高く、他の婚姻状況のあるグループでは20.2%でした。他の婚姻状況があるグループは、0.9 %減少しました。

 

18歳以下の子どもがいるグループでは31.3%、一方子どもがいないグループは22.6%でした。18歳以下の子どもがいないグループでのボランティア参加率は減少傾向にあります。

 

高等教育を受けた個人は、そうではない場合と比較してボランティアに参加する傾向にあります。25歳以上で学士号をもつ大卒者のボランティア活動参加率は38.8%、高等教育を受けているが学士号を持っていない人のボランティア参加率は26.5%、高卒者は15.6%、高校を修了していない場合は8.1%でした。

 

ボランティアを雇用という視点で見た時、雇用されている27.2パーセントがボランティア活動に関わりました。これに対して、失業者の23.3%、労働力のない人の21.4%がボランティアを行いました。雇用されているグループでも、パート・タイムの人がボランティアに関わる率は31.1%とフルタイムの26.3より高い傾向があります。

 

年間でボンランティア活動に費やす時間

 

2014年9月~2015年9月までの期間、ボランティア活動に年間を通じて費やす時間は52時間でした。男性は52時間、女性は50時間と、男女に大きな差は見られませんでした。年齢別にみると、65歳以上がボランティア活動に費やす時間は94時間と最長で、35歳以下では36時間でした。

 

団体の数と種類

 

ボランティアの多くは一つ(72%)、あるいは2つの団体(18.3%)で活動しています。高等教育を受けた個人は、複数の団体でボランティア活動を行う傾向にあります。

 

2015年、ボランティアが最も多くの時間を費やす団体は、教会など宗教団体で33.1%、教育・ユース・サービスの団体が25.2%でした。他の14.6%は学校やコミュニティ・サービスの団体でした。 

 

年配のボランティアは、宗教団体でボランティアする傾向があります。65歳以上の42.7%が主に宗教団体でのボランティアを行い、この数字は16歳~24歳の25.4%に比べて多いことが分かります。

 

全ての教育レベルに置いて、宗教団体でボランティア活動を行う傾向が見られ、教育、ユース・サービスがそれに続いています。しかし、高学歴者の宗教団体でのボランティア活動は減少傾向にあります。教育やユース・サービス団体でのボランティア活動は学位以上のボランティアの場合は26.3%で、高卒以下の場合は19.9%でした。

18歳以下の子どもがいる母親のボランティア参加率は45.1%、父親は36.8%で、教育あるいはユース・サービス系の活動への参加傾向が見られます。18歳以下の子どもがいないボランティアは、それら以外のボランティア活動に従事する傾向があります。

 

団体での主だったボランティア活動

 

食糧を回収、準備、配布、配ぜんする活動が2015年度のボランティアの主だった活動で、11.3%のボランティアのメインの活動です。勉強の個別指導、教えるボランティが9.2%、資金調達活動が9%、一般的な労働は8.8%でした。しかし、メインのボランティア活動は男女で違いがあります。男性は、一般的な労働力を提供が12.3%、スポーツでのコーチや審判が9.3%、食糧の回収、準備、配布、配ぜんなどの活動が9.2%)であったのに対して、女性は、食糧関係のボランティアが12.9%、勉強を教えるボランティアが10.6%、資金調達が9.9%でした。

 

主なボランティア活動は、教育レベルによって異なります。学士号あるいはそれ以上の学位がある場合は、専門的あるいは運営アシスタント、勉強の指導などのボランティアを行い、学位以下のボランティアは食糧関係のボランティアや一般的な労働を提供するボランティアを行う傾向があります。

 

子どもがいる親たちは、子どもと一緒に行うボランティア活動、スポーツのコーチや審判、勉強を教える、ユースのメンターを行う活動などに関わる傾向が、子どもがいないカップルに比べて多い。

 

ボランティアの41.2%がボランティアとなるように頼まれ、41.6%が自ら望み、ボランティア団体に申請しボランティアになっています。

 

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コメント: 2
  • #1

    (木曜日, 25 5月 2023 15:08)

    わかりやすい

  • #2

    (木曜日, 25 5月 2023 15:08)

    ありがとう