教育機関が行う環境ボランティア オーストラリアでの環境ボランティアの事例から

環境問題への関心の高まりと環境ボランティア

2005年に外務省によって発表された「地球規模問題に関する意識調査」において、日常生活の中で深刻に感じられる問題の上位2つが、「地球温暖化」「環境破壊」でした。

10年以上も前に行われた調査でしたが、その後2015年に採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の17のゴールのうち、少なくとも12が環境に関連していました。

環境ボランティアは、また持続可能性という視点からも、今後も多くの人々の関心を集めていく活動です。


環境ボランティアとは

環境分野でボランティアが関われる分野は様々です。生物多様性に関係する活動、温暖化、ゴミ問題、復興支援、政策アドボカシー系など、ボランティアは多岐にわたっており、実施団体も非営利団体、教育機関や地方自治体など主催団体もそれぞれで、様々な関わり方ができます。

一方、環境問題は因果関係が複雑で、行っていることが一体環境全体にとってどのような意味を持っているのかわかりづらいと言われております。

しかし、様々な問題が複雑にリンクして環境問題が引き起こされているからこそ、解決への特効薬はないと考え、小さなアクションも全体の問題につながっていくとも考えられます。

 

 

大学のカリキュラムとしての環境ボランティア

オーストラリア西部のエディスコーワン大学(The Edith Cowan University)で行われているカリキュラムの一環としての環境ボランティア活動の事例を紹介します。授業の一環でのボランティア活動は、ボランティアの3つの要素‐自由意思、非金銭的動機づけ、他者への利益‐のうち、自由意思ではありません。しかし、統計的に若者のボランティア参加率が他の年齢層よりも低いため、ボランティア参加のきっかけとして考えています。

 

オーストラリア統計局によると、25から34歳の人口のおおよそ30パーセント、また18から24歳の人口の27パーセントが、が何らかのボランティア活動に参加しています。

これは、国家平均の36パーセントを下回っています。35から44歳、65から74歳のグループは前者のグループの年齢層よりもボランティア活動に参加。45から54歳のグループが最もボランティア活動に参加しているというデータがあります。

同大学のカリキュラムは自然科学の学生を対象としており、1年と3年時に行われます。教科学習の一環として行われた環境ボランティアとしてどんな活動が、どのような形態で行われているのか、参加者の反応はどのようなものか、カリキュラムを実施する学校側の評価「大学生のための職場統合学習としての環境保全ボランティア(Environmental and conservation volunteering as workplace integrated learning for university students)」から紹介します。

実習カリキュラムとしてのボランティア

同大学の自然科学を専攻する学生は、学部生の一年時に、必修の実習としてコミュニティで環境に関連する団体を通じ、5日間の環境ボランティアを行います。5日間のボランティア活動は3040時間に該当します。また、2度目の実習は3年時に10日間行われます。

 

活動場所となる団体や活動は学生自らが選びます。ボランティアを希望する団体に履歴書を送り、面接を経て、団体のボランティアとして活動に従事します。

 

1年時の必修環境ボランティアの狙い

1年時の必修実習は、様々な環境団体の構造、資金源と資金への依存、政府や他の組織との関連性を学び、広範な環境保全について学ぶことを狙いとしています。学生は、環境問題を解決することは科学と技術の理解だけではなく、これらの問題を解決するために人々と組織がどのように協力し合っているか、実習を通して理解します。

 

実習の受け入れ団体は、生物多様性の保全、資源の持続可能な利用を促進する上で重要な役割を果たしており、地域社会との強いつながりを持ち、ボランティア活動に力を入れているところが候補地となります。

また、多くの政府機関(動物園や植物園などの独立した機関を含む)もまた、ボランティアに依って、保全と環境管理に関連する特定のプログラムや活動を実施しており、学生・受け入れ団体相互に利益があります。

 

受け入れ団体、活動地域の傾向

2010年度は、44名の学生は49か所の受け入れ団体で活動し、その総活動時間は2,659時間でした。野生動物の保護に関する活動が一番多く19パーセント、灌木・低木の手入れ/復元活動が18パーセント、海洋関係の活動が7パーセント、その他5パーセントと続いています。受け入れ団体の半数はNGO、それに続いて政府関係の団体、企業など環境保全系の団体です。

学生が活動を行った団体の73パーセントが、大学のある地域であるパースとその周辺でした。西部オーストラリア地域では16パーセント、残り12パーセントは海外で実習活動を行いました。

 

学生たちが受け入れ先となる団体を決めるに際重視しているのが、専攻との関連がある団体と活動です。

例えば、生物学専攻の学生は、動物園や獣医に行く傾向があります。野生動物保護活動は野生生物保護、生物学専攻の学生には人気の活動です。野生動物の保護、モニタリング、調査活動のアシスタントなどの活動に関わっていきます。

一方、研究室での研究がメインとなる専攻の学生たちは、受け入れ先の団体を見つけるのに苦労しています。そうした学生の場合は、就業に近いタイプの活動となりました。

 

実習後の学生による活動評価

5つの項目、「大学の学業との関連性」、「受け入れ団体の有用性」、「卒業後の進路の優位性」、「活動を愉しめたか」、「活動は大変であったか」など、5段階で評価を活動参加前と後で行いました。評価は活動の前後では大きく変わることはなく、全体的に5段階中2番目に高い評価でした。

活動参加前後で大きな変化が見られたのは、「活動の大変さ」の項目でした。参加前は、かなり大変な活動を予想していましたが、実際はそのような活動に参加した経験のない・あるいは浅い学生にあった活動でした。また、卒業後の進路についての項目においては、活動前は優位性についてそれほどの期待は持っていなかった(5段階評価中3番目)ものの、活動参加後期待値は多少の上昇を見せました(5段階中2番目)

 

 

 

大学の学業との関連性

受け入れ団体の有用性

卒業後の進路の優位性

活動を愉しめたか

活動は大変であったか

活動前

活動後

活動前

活動後

活動前

活動後

活動前

活動後

活動前

活動後

とても同意する

14

4

11

12

3

6

8

7

20

1

ある程度同意する

15

15

15

13

4

14

16

15

10

8

どちらとも言えない

5

13

6

9

21

12

10

9

4

15

あまり同意しない

0

2

2

0

5

2

0

3

0

6

まったく同意しない

0

0

0

0

1

0

0

0

0

4

回答者数

34

34

34

34

34

34

34

34

34

34

 

参加した学生が得たもの

授業の一環でのボランティア活動は、学生の「自主性」の欠如が指摘されますが、カリキュラムが義務付ける時間よりも多くの時間をボランティアは受け入れ団体で過ごす傾向も見られました。

 

また大学での勉学における直接的な学びとはならないもののボランティア活動を通じて、今後の進路についての方向性を見出し、生徒は特定のスキル(動物の扱いなど)を学び、実践し、地域社会や環境に貢献することができたという結果が見られました。

 

学生のボランティア活動がセクター全体に対する貢献は比較的少ないものの、学生にとっては自信を持つことや、雇用につながるスキルを身につけることにつながっています。特に2度目の実習時には、大学卒業後の進路のためのネットワークの構築につながるため、一年時に受け入れてくれた団体と同じ団体に申請する傾向も見られました。

 

教育機関における教科学習に関連したボランティア活動は、海外で盛んに行われています。 
 これは、経験が一般的に利他主義と実際の体験をベースとしたスキルの開発に役立ち、さらに学問的理解の向上に役立っています。

 

参考文献

地球規模問題に関する意識調査

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/i_chosa.html

 

Environmental and conservation volunteering as workplace integrated learning for university students Rowena H. Scott and Eddie van Etten Edith Cowan University

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